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SEI子さんと学ぶ もっと知りたいあの製品技術

今月の注目製品
実装コストを大幅に低減する次世代ミリ波MMIC

今回は、携帯電話などの大容量通信インフラを支える製品をご紹介します。

製品データ

MMICってなに?

MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)とは、トランジスタやダイオードなど複数の素子を、一つの半導体基板上で一体化させたマイクロ波集積回路のことです。MMICは、移動体通信機器など
の電子機器において、信号の増幅器などに使用されます。

現在、携帯電話などの高速データ通信サービス「4G LTE(※1)」の普及に伴い、携帯基地局間をつなぐ通信幹線網のデータ量が急増しています。このため大容量通信インフラとして、携帯基地局間を光ケーブルでつなぐシステムに比べ、敷設費用が安価で、災害に強いミリ波を使った無線通信システムに注目が集まっています。これまでも増幅器としてMMICが使われていますが、特にミリ波を使ったシステムでは、実装におけるわずかなズレが装置の性能に大きな影響を与えるため、実装コストの増加が課題となっていました。

※1
LTE:Long Term Evolution 携帯電話の通信規格

今回開発した製品の特長は?

当社が今回開発したミリ波MMICは、従来の製品に比べ実装コストを大幅に低減させた点に特長があります。本製品を基板に実装する際WLCSP(※2)というデバイス構造を採用することで、通信機器の実装基板に直接実装することができ、高周波性能のばらつきを改善させるとともに、実装面積を当社従来品に対し3分の1にしました。その結果、装置の小型化が実現でき、通信機器メーカーにおいて大幅なコスト低減を図ることが可能となりました。本製品は、2014年10月より量産を開始しており、既に大手通信機器メーカーの複数機種に採用されています。

※2
WLCSP:Wafer Level Chip Scale Package ワイヤボンディングを使わずに実装することが可能なチップサイズの表面実装型パッケージ
技術者に聞きました
住友電工デバイス・イノベーション(株)
電子デバイス開発部
久保田 幹
久保田 幹

開発のきっかけはなんですか?

周波数の非常に高いミリ波帯で使われるMMICは、これまで配線にワイヤボンディング(※3)を使うことが一般的でしたが、ワイヤの位置がわずか50マイクロメートル(1マイクロメートル=0.001ミリメートル)ずれただけで、性能が大きく変化してしまい、その調整には非常に多くの時間がかかり、実装コストの大幅な増加が課題でした。そのような課題に対し、私たちは、一般的な電子部品で広く使われていて、部品同士の接合を短時間で行うはんだ実装の技術が、ミリ波MMICでも実現できれば、業界の常識を変える革新的な製品になると確信し、他社に先駆けて開発に着手しました。

開発で難しかったことはなんですか?

製品実装後の品質保証と性能劣化を回避することが最大の課題でした。品質面の課題として、デバイスと基板の接合部分にはんだが浸透し、性能を大きく低下させてしまうことがありましたが、開発チームが一丸となって試行錯誤を重ねた結果、はんだの浸透を抑えることに成功しました。また性能面では、はんだ自体が製品性能を大きく変化させるため、はんだの接合部分を正確にシミュレーション解析し、性能の劣化を最小限に抑える構造を確立することに成功しました。この新技術は、当社製品の今後の柱のひとつとなる、重要な技術となっています。

※3
直径数十マイクロメートルのワイヤを用いて、素子と半導体基板を電気的に接続する方法

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