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第3回 ステークホルダー・ダイアログ

第3回 住友電工グループ ステークホルダー・ダイアログ

ステークホルダー・ダイアログ 第3回となる今回は、住友電工 東京本社において、CSRについて卓越した知見をお持ちのお二人の有識者と、住友電工グループの社会貢献について意見交換を行いました。これまでの社会貢献活動の成果を振り返るとともに、グローバルに事業を展開する企業として、住友電工グループの果たすべき役割について活発な議論が交わされました。

意見交換の様子

開催概要

開催日:
2013年3月7日(木)

場 所:
住友電気工業(株)東京本社

足達 英一郎 様 上妻 義直 様
足達 英一郎 様 上妻 義直 様
ご参加いただいたメンバー(50音順):
足達 英一郎 様(株式会社日本総合研究所理事)

専門分野は社会的責任投資(SRI)、企業の社会的責任(CSR)。
環境省や内閣府等数々のプロジェクトで活動。
主に企業の社会的責任の観点からの産業調査、企業評価を手がける。

上妻 義直 様(上智大学経済学部教授)

専門研究分野は環境会計論および国際会計論。環境省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、内閣府、日本公認会計士協会等のCSR・環境関係の検討会・研究会等で座長・委員等を歴任。


ファシリテーター:
福島 隆史 様(株式会社サステナビリティ会計事務所 代表取締役)

住友電工出席者:
賀須井 良有(執行役員 人事総務部長) 春日 昌仁(人事総務部 CSR推進室長)

スケジュール

開会のご挨拶、趣旨説明→住友電工グループの社会貢献活動に関するご説明→意見交換→総括と閉会の挨拶
会場の様子

意見交換

テーマ:住友電工グループの社会貢献のあるべき姿とは

住友電工グループの社会貢献のあるべき姿とは

福島:

グローバルに事業を展開する企業として、住友電工グループにどのような社会貢献活動が求められているか考えていきたいと思います。まずは現在の活動状況についての率直なご感想をお願いします。


上妻:

CSR活動は、ビジネスの基盤となる社会と良好な関係を保つために必要であり、その一環として社会貢献があるように思います。住友電工グループの事業はグローバルな規模で展開されています。そのため、良好な関係を維持すべき範囲は広大です。その一方で、会社は株主に対する経営の受託者責任があるので、社会貢献のコストも正当性が問われます。まずは組織における「社会貢献活動」の位置づけから考える必要があると思います。

上妻

足達:

現在の社会貢献活動を仮に止めてしまったらどんな不都合が起きるか?ということを考えてみると、逆に何に必然性があるかが浮かび上がってくるのではないでしょうか。たとえば自動車メーカーなどですと、新興国における自動車整備工の育成支援は、単なる社会貢献ではありません。メンテナンスの仕組みの有無が自動車の“財の価値”を変えてしまうので、円滑な操業に欠かせない活動になっているわけです。

足達

賀須井:

「住友の事業精神」の「自利利他、公私一如」という言葉に、わたしたちのCSRの精神が凝縮されています。“住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない”という考え方です。本業を通じて製品・技術を社会に提供すること、そして各地域で雇用を増やし、納税し、社会に負荷をかけないこと。そういった本業を通じての社会貢献が活動のベースとなっています。


春日:

モノづくり企業として、技術開発と人材育成も当社グループにふさわしい社会貢献のテーマと考え、注力しています。また、活動における社員一人ひとりの自主性を重んじることも、活き活きとした企業風土の実現において重要な視点ととらえています。

春日

上妻:

ビジネスの目的と関連づけができていて、ビジネスに組み込まれているのが社会貢献のあるべき姿と考えます。人材育成にしても、単なる社会貢献を越えて、事業活動と一体化するのが望ましいですね。CSR活動を、社会と住友電工グループ双方の長期的成長を支える重要なインフラであると認識し、事業活動を展開する地域で、それをどうやって整備していくのかと考えるとき、今後注力すべき事柄が見えてくるでしょう。


賀須井:

現在、様々な活動に取り組んでいますが、それらを束ねる大きな柱が必要になっているのかもしれません。今後、方向性を明確にすることを検討していきます。


社会貢献にも"戦略性"が必要な時代

足達:

ISO26000の中核主題のひとつに「コミュニティへの参画およびコミュニティの発展」があります。日本では、教育・衛生・技術振興などは行政の役割ととらえる傾向にありますが、グローバル企業では自社の強みがある領域は積極的に担おうとする動きもあります。特に新興国においては、企業への信頼感を左右する大きな要素になりつつあると思います。


上妻:

現在取り組んでおられる活動はきわめて適切で、社会的な貢献度も高いと思いますが、さらなる進化のために、その「戦略性」についても考えていきたいところです。国際社会では、社会の様々な資源を使って利益を得ている企業は、「受益者負担」の見地から社会的課題の解決に貢献すべきであると考えられています。その責務を果たしつつ、自らも成長するためには、社会貢献にも戦略的な対応が必要です。急速なグローバル化のなかで、従来の日本的な対応では国際社会の承認や評価を得にくくなっています。「戦略性」は真のグローバル企業として避けて通れない脱皮のプロセスではないでしょうか。


賀須井:

特にわたしたちは新興国でもビジネスを行うグローバル企業として、地域社会の発展に寄与することを重視しており、人材育成は、社会と個人に還元される究極の社会貢献であると思っています。当社ではグローバルな人事制度の構築に取り組んでおり、2011年9月に「グローバルHRMポリシー」を制定しました。現在、より具体的な施策を検討しています。

賀須井

社会貢献活動の目標設定について

福島:

活動のPDCAサイクルを回し成果を上げるためには、目標設定は欠かせないものです。社会貢献活動においては、どのようにターゲットを絞っていくべきでしょうか。

福島

上妻:

目標値を設定するには、まず目的が明確になっていなければなりません。ビジョンとの関連で、重要性が高いものから具体的な目標設定をするべきではないでしょうか。


足達:

目標設定や定量化を考える前に、その活動が社会に対してどのような裨益(ひえき)があるかを考えるといいと思います。その益を考えることで、意義やターゲットの再認識ができます。


賀須井:

リーマンショック、自然災害、国内人口減少や高齢化など、社会の変動が激しい状況下では「人を育てる」ことも、事業活動自体の雇用を守れてこそ成り立つ活動であり、また長期的な将来予測も困難です。一方でこれまで、社会貢献活動の当事者である社員の気づきや学びが、自らの成長と組織の活性化につながるという側面も大切にしながら取り組んできました。事業活動との相乗効果を考えながら、社員を育て株主の支持も得られるような中長期的なターゲットづくりを目指したいと思います。

賀須井

独自の技術力で、社会の未来に貢献していく

足達:

これまでは市場が短期志向に傾いていたため、利益に直結しない領域を語ることが困難な雰囲気がありました。そのため研究開発の分野でも、たとえば夢のある技術の重要性などが見えにくくなっているのではないでしょうか。リーマンショックを経て、欧米では株式市場をどのようにして中長期的な視点に変えていくかの議論が始まっています。新たに策定される中期経営計画「17VISION」においても、中長期的な視点が見えると、そこを切り口とした社会貢献活動が出てくると思います。

足達

賀須井:

研究開発の世界では、成果が出るまでに30年かかるものも珍しくはありません。海のものとも山のものともつかない状態でも投資して開発を続けるのは、ある意味で社会貢献と言えるかもしれません。しかし受託者責任を遂行していくためには、将来のビジョンをしっかり提示することが必要と考えています。「17VISION」に結びつけた形で、社会にどんな貢献ができるのか。おっしゃる通り整理することで、住友電工らしい活動が浮かんでくると思います。「利益」と「住友電工らしさ」の両方を守って取り組んでいきたいと考えています。


事業と社会貢献活動のリンクを目指して

上妻:

直接収益に結びついていないものは、いまのところ社会貢献の枠組みでの対応が必要でしょう。しかし、まだどこに役立つか明確でないが、将来きっと人々の暮らしに役立つ基礎技術を、住友電工はたくさん持っています。それをもっと訴求して欲しいと思います。

上妻

足達:

企業情報開示において、統合報告というトレンドがあります。会社のビジョンに非財務側面の活動が結びついていることを社会が期待していることのあらわれとも言えるでしょう。


上妻:

中長期的な目標と照らし合わせながら、現在取り組んでいることの適切性を社会に説明する能力が問われています。社会が企業に求める責任の範囲が拡大するなかで、問題の半分はバリューチェーンの上流や下流で起きているという調査結果があります。それらの見えないリスクを適切に評価し、ビジネスと一体的に取り組むべきものについては、経営資源を重点的に配分する戦略性が必要だと思います。


賀須井:

事業戦略と社会貢献活動とのリンクが、今後の課題であると再確認できました。わたしたちは各組織の力を結集して、そのふたつを有機的に機能させる必要がありますね。大切な課題とさせていただきます。ありがとうございました。


賀須井 良有 CSR委員会委員長 常務取締役
賀須井 良有
執行役員 人事総務部長
ステークホルダー・ダイアログを終えて

これまで悩んでいた内容に一つ方向が見えて来たような気がしております。率直なご意見をおうかがいして、今後の進路について新たな方向性を目指す一方で、これまでの取り組みについて、ある程度の自信や確信も持つことができました。当社グループのCSR活動、特に社会貢献活動が、いよいよ次のステップに入る時期に来ていることを感じています。本当に貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。

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